9月の後半より1週間、ネヴァダ州の山中にターコイズ鉱山の発掘に向かいました。 発見できるかどうかは分かりませんでしたが、20年来の夢でしたので行くことだけでも価値があると思い旅に出ました。 ディネ族の相方とは5年越しの構想でしたので、待ちに待ったアドヴェンチャーでした。 5年前には早々と既に2台の4輪バイクを用意しており、この日まで眠っておりました。 そもそもこの度の始まりはとあるバーでの出会いでした・・・・。
ある日とある小さな町のバーで飲んでいると、どこからともなく話し声が耳に入ってきました。 聞き耳を立てていたわけではないのだが、どことなく自分たちに話しかけてきているようでした。 ある年配の男性たちがネヴァダの砂漠にある山の話をしていました。 どうやら山中でターコイズのような石を偶然見つけたらしい。 相方は立ち上がって、その話を詳しく聞かせてくれないかと話しかけた。 男性はその出来事を快く話してくれた。 そして一枚の紙を取り出し地図を描いてくれた・・・・。
あれから5年。 相方はその地図を大切に持っていたのだが、当時酔っていたせいか描いてくれた地図の場所を理解しておらず、曖昧な記憶の中であった。 私は地図の解読に乗り出した。 ある程度の場所は特定できたが、ネヴァダの砂漠のある程度とはとてつもなく広い「ある程度」であった。 Wagon Trailと呼ばれる車では通れない道が地図に描かれていた。 市販の地図にはそんなに細かい小さな道は描かれていない。 そこでコンピュータを取り出し衛星写真から読み取る。 うっすらとWagon Trailが見て取れる。 あとは実際に行ってみて鼻と勘を頼りにするしかない。
旅の準備に入る。 食料を積み込み、トラックでトイハウラーと呼ばれる移動型のスモールハウスを引く。 と言っても運転してみると長く重い。 ラスヴェガスに向かう途中の真夜中の山中でトイハウラーのタイヤが1つパンク。 スペアタイヤを探すが真っ暗で見つからない。 ハウスを切り離し、タイヤを求めて近くの町まで降りて行く。 真っ暗な山中でひとり留守番。 何がやってくるか分からない。 拳銃を脇にいざというときに備える。 もちろん本物の拳銃など触ったことは無かった。 何か起こっても引き金は引かなかっただろう。
小さな町で真夜中に開いている店など無い。 2時間後戻ってくるが、そこから抜け出す方法は見つからない。 スペアタイヤがあるはず・・・・。 ん!? あるではないか・・・・。 あの2時間は何だったのだろう・・・・。
スペアタイヤに交換してようやく暗闇から抜け出すことができた。 近くの小さな町のカジノの駐車場に停めてそこで夜を明かすことにした。 翌朝、万が一に備えて、交換したタイヤと破裂しそうに見えたタイヤを交換した。 そのまた万が一に備えてパンクししそうなタイヤをキープしておいたほうが良いと思ったが、その意見は拒否されてしまった。
NYの友人もラスベガスで合流し、ポイントへ向かう途中の小さな町で夜を明かすことになった。
翌朝いよいよポイントへ向かう。 ポイントへはラフな道を通らなければならなかった。 トイハウラーを引いている上、道もラフなのであまりスピードは出せない。 !?・・・・。 そしてまた一つタイヤがパンクしてしまった。 私の予想は見事的中。 スペアタイヤに取り替えて再出発。 !?!?。 数十分後また一つタイヤがパンク・・・・。 これまた予想的中。 予備のタイヤは無い。 あまりにも良くない予想が2度も的中したものだから、仲間は私の勘を疑う余地も無かった。
トラックをできるだけ端に寄せてそこで夜を明かす。 三度目の停泊である。 不幸中の幸いか、外を見渡すと辺り一面セージで埋め尽くされ無限に広がっている。 セージの甘い香りが辺り全体を包み込んでいる。 空を見上げれば宝石のような星が無限に広がっている。 トラブルのことなど忘れてしまうほど癒された。 自然からの素晴らしいお土産であった。
翌日トラックからトイハウラーを離し、片道3時間かけて近くの町にタイヤを探しに行くが、小さな町のためタイヤは売っていない。 なんとかパンクしたタイヤを修理してもらい、取り付けて再々々出発。 パンクの危険性が高くあまり遠くへは行けないため、できるだけポイントに近いところにキャンプを張ることにした。 この時点でポイントに到着するのに3日もかかってしまった。
さっそく4輪バイクでポイントに向かうことにした。 ポイントといっても、近そうに見えて結構な距離がある。 地図を見てポイントを探した。 地図が古いのと、あまりにも広大な場所でなかなかポイントを把握することができない。 走ること約40分。 山の形、山の数、 道の分かれ方などからポイントらしき場所を見つけることができた。 辺りを見回すときらきらと白く光るものがたくさん落ちている。 良いサインである。 ただ、どうも鉱脈らしきものがある場所とは思えなかった。
さっそく4輪バイクでポイントに向かうことにした。 ポイントといっても、近そうに見えて結構な距離がある。 地図を見てポイントを探した。 地図が古いのと、あまりにも広大な場所でなかなかポイントを把握することができない。 走ること約40分。 山の形、山の数、 道の分かれ方などからポイントらしき場所を見つけることができた。 辺りを見回すときらきらと白く光るものがたくさん落ちている。 良いサインである。 ただ、どうも鉱脈らしきものがある場所とは思えなかった。
探索2日目。 第2のポイントへ向かう。 地図を見ると、どうやら東から向かっても西から向かっても道が無い部分が存在するようだ。 そこがポイントらしい。 人が車で行けないところにこそあるというのもうなずける。 虎穴に入らずんば虎児を得ずとはこのことなのか。 今日は東の方向からポイントに向かうことにする。 始めは道なりにうまく進むことができたが、進むにつれて段々と獣道になって行き、走行が困難となってしまった。 GPSを使いポイントを探したが、ポイントにたどり着くことができなかった。 その夜は作戦会議が行われた。
探索3日目。 今日は西からポイントに向かう。 東から向かうよりも少し距離が短縮できる。 ポイント近くに向かうと、グリーンの石があちこちに落ちているのを発見した。 だがそれらはターコイズではなかった。 周辺を当たると気になる場所を発見した。 3人で手分けして探すことにした。 私が鼻を頼りに山を登ると、地図の説明と一致すると思われるポイントにたどり着いた。
ここそこに白く光るものが転がっている。 クオーツである。 そしていつの時代のものか分からないがアロウヘッドも落ちている。 鹿を追って獲り逃がしたのであろう。 獲り逃がした晩は何を食べたのだろうだとか、奥さんに怒られたのだろうだとか、いろいろなことが思い浮かぶ。 どうやらこの周辺は古いシルバーかゴールドの鉱山と思われる。 辺りを探したがターコイズは見つからない。 そこである思いが浮かぶ。 この地図を描いてくれた彼は、ターコイズがどんなものか知っていたのだろうか。 ターコイズが何色か知っていたのだろうか。 ひょっとしてさっき見つけたグリーンの石と勘違いしているのではなかろうか・・・・と。
探索4日目。 雪である。 気温はマイナス・・・・。 しかも時間が経つにつれ、段々と吹雪いてきた。 寒い。 仲間たちは完全に季節を間違えていた。 体脂肪の少ない私は標高を考慮し真夏に行くべきと考えていたが、体脂肪が標準よりもかなり超えている相方たちは夏の暑さを恐れ、真夏を過ぎた10月に行くべきと考えていたようだ。
ここでも私の予想は的中していた。 本来であればもう3日探索する日があったのだが、タイヤのパンクにより3日もロスしてしまった。 そういえば・・・・、衛星写真からターコイズがありそうなポイントを予めチェックしておいた。 何かを予感した私に仲間はついて来てくれた。 これまでの経験上、私の勘を信じざるを得なかったこともあるであろう。
クリスマスツリーが並ぶ雪山は、まるで季節はずれのホワイトクリスマスのようであった。 美しい反面、雪に覆われた地面からターコイズを探し出すのは不可能に等しかった。 西の空が明るくなっていたのに気づいていた私は、午後の晴れ間と雪解けを密かに期待していた。 雪解け後の地面はドライな地面よりもターコイズを発見し易いからである。
午前中は吹雪となりかなり厳しい状態であった。 それでも長年待ち続けここまで来て諦めるわけには行かない。 少しでも可能性がある限り挑戦する。 絶対に諦めない。 それだけを胸にここまでやってきた。
午後になり、夢中で探していたので気が付かなかったが、いつの間にか晴れ間が覘いていて地表が顔を出していた。 ここでも予想が的中していた。 仲間の一人が違うポイントに行きたいと言い出した。 相方はその意見に賛同し、そのポイントに行くことになった。
その途中気になる山があった。 何故か頂上まで登りたくなった。 山の中腹で白くきらきらと光るものがあった。 クオーツであった。 セージの木の周りにきらきらと輝いていた。 ふと木の根元を見るとクリームグリーンの色をした石が転がっていた。 ターコイズではないか? いや、ヴァリサイトかもしれない? 不確かであった。
さらにその周辺を見回るとさらにまた同じような石を発見した。 メイトリクスが確実に入っている。 ここでも確証には至らなかった。
さらに見回るとクリームホワイトの石の中に濃いグリーン色を確認した。 その瞬間、TURQUOISE!!!! と叫んでしまった。 見つけたらターコイズを天に掲げて叫ぶ瞬間を夢見ていた。 まさにその夢が叶った瞬間であった。 明らかにターコイズである。 興奮と感動を隠し切れなかった。
さらに頂上へと進む。 大きな石の表面にクリームグリーンを確認した。 割ってみると濃いグリーンが現れた。 さらに頂上へと進む。 同じようなところに5角形のターコイズが地面に刺さっていた。 綺麗な細かいスパイダーウェヴが入っていた。 もう何も言うことは無かった。 完璧なスパイダーウェヴのターコイズである。 最初に発見したポイントに戻り、スティックを地面に突き刺した。 20年来の長年の夢が叶った瞬間であった。
その喜びもつかの間・・・・。 歓喜の美酒に酔いしれた仲間がトラブルの甲冑にいたことは容易に想像できた。 正負の法則とはこれまさにこのこと。
さて今後どうするか。 酒混じりの仲間とはまともな会話はできなかった。 見つけることが夢であった自分にはこの先のことなどどうでも良かった。 だが、ビジネスに意欲をみせる仲間たちは、その先の夢を酒と共に語っていた。
ターコイズをビジネスベースに乗せるのは決して簡単ではない。 かなりの労力と根気、そしてお金が必要である。 それはビジネスベースに乗せたいのであればそれらを準備して全身前進すれば良いだけの話である。
だがここは、長年の夢を叶えてターコイズに出会わせてくれたことに感謝し、敬意を表したいと思った。 食料と同じで、自分たちが必要なときに必要なだけ採ればよいのではないかと考えた。 ここはそっとしておいた方がよいのではないかと。 食料と同じで、獲り過ぎれば枯渇してしまうし、環境にも良くない。 自然に感謝する意味で、戴いた分を何らかの形で還元するべきではないかと。 それによってターコイズは自然に輝きを増す。 そう考えた。
ただ、ここまで来れたのは自分だけの力では無く、皆様をはじめ応援してくださった方々のお力添えがあってのこと。 そして仲間2人の協力があってのこと。
多数決で言うと1対2。 2人の意見はクレームを申請して採掘権を取得する意向。
それからのことはまだ決まっていない・・・・。
ただ、どのような方向に進むにせよ、今後この山から旅立ったターコイズがどのような輝き方をするのか楽しみである。
これには3人共一致である。