Mining turquoise in Bisbee Part Ⅱ

翌年。

その思いが現実となる。

また相方からのメールが届く。

「おい!また鉱山に入れるぞ!行くか?」

「返事なんかいらねーだろ!当たり前だ!」

2年連続で鉱山に入れるなんて稀だ。

 


ターコイズ鉱山発掘記

二つ返事で航空券を購入しホテルも予約した。

もちろん今回は別々の部屋で。

前回のルートでビズビーに到着。

前回より少し早く着いたので街中を散策してみた。

クラシックな銀行やアンティークショップ。

ハーブショップや雑貨店など小さな町でもいろいろある。


ターコイズ鉱山発掘記

その中でターコイズとジュエリーを扱うショップが1件あり中を覗いてみる。

うん。

ま、こんなもんだね。

この町のショップには良いターコイズは無いということが改めて判った

町中に良いターコイズを扱う店があれば皆訪れる。


ターコイズ鉱山発掘記

皆訪れない理由は訪れてみて解った。

ショップを後にして夕食を済ませ明日に備えた。

 

 


ターコイズ鉱山発掘記

1日目。

前回の反省点を踏まえて必要なツールを携え、完璧とも思えるような装備で出陣した。

まるで初めて来たかのようなフレッシュな感動を覚える。

ある意味ここは大自然。

いつ来ても良いものである。

大きな期待を胸に掘り始める。


ターコイズ鉱山発掘記

掘る。

掘る。

ひたすら掘る。

出ない。

出ない。

出てこない。


ターコイズ鉱山発掘記

何も出てこない。

そもそも地平線が見えるようなこの広大な土地のどこに青い石が眠っているのか。

簡単に見つかるのは嬉しいしそれに越したことはないのだが、なかなか見つからないからこそ見つけた時の喜びも大きいし、それがいかに貴重なものかということを身をもって伝えられる。


ターコイズ鉱山発掘記

なんて前向きに取らえてはいたが、何も出てこない。

そもそも、よく考えてみれば完全装備をしていれば見つかるわけではない。

見つけた後に役に立つものである。

今更にそれに気付く。

これまでのイメージや友人の鉱山主の話を聞いていることと異なり、あ


ターコイズ鉱山発掘記

まりの出てこなさに呆然とする。

小さな一粒でも見つかれば一気にやる気と元気がみなぎってくるのだが、疲労と絶望感からか何度も天を仰ぐばかり。

結局一粒も見つからないまま1日目を終えた。

一粒も見つからなかったが、入りたいと思っても普通ではなかなか入れない場所に入れて、掘りたくても普通ではなかなか掘れない作業ができ


ターコイズ鉱山発掘記

ることに感謝と喜びであふれ、いつの間にか疲れと絶望感は忘れていた。

作業に没頭し気が付くと風が吹いていた。

やがて暗雲が広がり辺りは薄暗くなってきた。

作業をするにはちょうど良い気温だが風で土埃が舞い目も明けていられないほどになってきた。

 


ターコイズ鉱山発掘記

前かがみになって掘り進めていたので腰に疲労感を覚え、直立姿勢になったその時、

突然突風が吹き被っていたキャップが天高くへと飛ばされてしまった。

あっ!っと思って行方を追ったが時すでに遅く、天高く舞ったキャップは10mほど高くの崖のわずかに平らなところに着地してしまった。

高いところからだと見えるが、低地からでは見えない。


ターコイズ鉱山発掘記

無くてもいいか、と思ったが、高地とはいえここはアリゾナ。

熱中症にもなりかねない。

いつもなら新しいキャップを買えばよいという発想が生まれるが、なぜか新しいキャップを買おうという発想はその時はなかった。

限りある時間の中、キャップを取りに行くのは無駄な時間であるがその思いとは逆にもうキャップのある方向に足が向いていた。


ターコイズ鉱山発掘記

キャップのある場所の低地まで下りて行き、上を見上げる。

キャップは見えない。

登れない角度ではないので崖に足を踏み入れると簡単に細かい岩が崩れて登り難い。

ふと視界にオレンジ色のものが入った。

安全を管理している警備員の蛍光ベストだ。

 


ターコイズ鉱山発掘記

そこで時間を巻き戻して一通の紙を思い出す。

確かサインをした誓約書に決められた管理外の場所に立ち入ったり、崖に登ったり危険行為と思われる行動をしてはいけないというような内容の文言があったことを思い出した。

出入り禁止になっては元も子もないので、近くにいた警備員に声をかけた。


ターコイズ鉱山発掘記

風でキャップが飛ばされてあの辺りに落ちたんだけど取りに行っていいかな。

うーん。ほんとはだめだけどな。すぐ降りてくるならいいよ。

わかった。ありがとう。

身軽なので公園の砂場の山を登るように、足元がすべりながらもひょいひょいと崖を登っていった。


ターコイズ鉱山発掘記

 下からは見えなかったが予測していたキャップがあるであろうところの8割程度のところまで登ると飛ばされたキャップが見えた。

ほぼ予測した通りの位置であった。

1mもないくらいのわずかな平らな足場があり、そこにキャップが着地していた。

キャップを拾い上げた瞬間、


ターコイズ鉱山発掘記

衝撃の光景が広がった。

岩に走る青い稲妻だ。

うわ!っと声には出さなかったが衝撃が走った。

こんなにも大きくて真っ青な稲妻が走っている岩が目の前にある。

まるで神様がここだよと教えてくれたかのように風に飛ばされたキャッ

プの下に青い稲妻が走っていた。

 


ターコイズ鉱山発掘記

松本匡史か!

思わず岩を持ち上げようとしたが微動だにしない。

周りにある細かい岩を掻き分けて動かそうとしたがビクともしない。

銅の成分を含んだ赤茶色い岩は見た目以上に重い

一心不乱に夢中になっていると、フィー!という音が下から聞こえた。


ターコイズ鉱山発掘記

聞こえた瞬間それが何であるか解った。

下を見ると警備員がジェスチャーで下りてこいの合図を送っている。

それもそうだ。すぐ降りてくるなら良いと言われていたからだ。

無念にもその場を離れて急いで降りる。

興奮冷めやらぬ中、警備員に。

あそこでターコイズを見つけたん! でも大きいんだ! 道具を持って


ターコイズ鉱山発掘記

くるから取ってきていいか?

 

うーん。多分だめだな。

そこをなんとか頼むよ。

うーん。こればかりは決まりだからな。

わかった。ちょっと待ってくれ。

しばらくすると相方が何かを察してこっちに歩み寄ってきた。 


ターコイズ鉱山発掘記

こんなにでっかいターコイズをあそこで見つけたんだ!

 

大きくて重くて動かそうと思ってもビクともしねえんだ。

多分てこの原理でシャベルとか使えば動きそうな気がするんだけど。

そこで相方が警備員に交渉に出た。

頼むよ。なんとかなんねーか?

また何か作ってやるからよ。 


ターコイズ鉱山発掘記

その警備員はたまたまインディアンジュエリーが好きなやつだった。

 

先日彼が我々を彼の自宅に案内してくれ彼のコレクションを見せてくれ

た。

その時に相方がバックルを作ってあげる約束をしていたのだ。

仲良くなっていたので相談し易かった。

わかった。

 


ターコイズ鉱山発掘記

今はダメだが明日の朝早くだったらいいぞ。

 

さすがだ、きょーでー!ありがとう。

その時すでに照準を明日に合わせていた。

この強風だと作業は無理だな。

今日はここまでとするか。

興奮の中現場を後にする。


ターコイズ鉱山発掘記

興奮冷めやらぬ中、作戦会議を兼ねて夕食を取る。

 

どのくらいでかいんだ?

このぐらいはあったな。でもターコイズが走っているのはこのくらいだ。

まじか!?

でもいくらやってもビクともしねえんだ。


ターコイズ鉱山発掘記

多分スコップとかでてこの原理を使って掘り起こすしかないかな。

でかくて重いから掘り起こして下まで転がすか。

 

そうだな。

その景色に何か違和感を覚えた。

おい!

雨だ!

 


ターコイズ鉱山発掘記

雨だぞ!

おー!

 

やったな!

今日は早めに戻って早めに寝て明日に備えるか!

酒好きの相方が珍しく飲みに行くことをしなかった。

雨は大歓迎だ。

 


ターコイズ鉱山発掘記

 

 

 

明日が待ちきれない。

今日は早めに寝よう。

興奮のうちに眠りにつき朝を迎えた。


ターコイズ鉱山発掘記

再戦2日目

晴れた。

晴れでも雨でも良かった。

準備を整え毎度の如くいつものレストランで早々と朝食を済ませ待ち合わせ場所に向かう。

待ちきれずかなり早く到着してしまった。

 


ターコイズ鉱山発掘記

よし!決戦の時だ!

現場に向かう。

暑くもなく寒くもなく雨上がりの絶好の陽気だ。

こんな日はなかなかない。

ターコイズを見つけたポイントに向かう。

おおよその場所はわかっているが、念のため低地に印をつけておいた。

 


ターコイズ鉱山発掘記

警備員から注意が与えられた。

いいか。他の警備員も見てるから俺が合図したら行け。また合図したらすぐに降りてこい。

わかった。

道具を携えて崖を登る。

相方も膝と腰に爆弾を抱えたまま巨体を揺らして崖を登る。

 


ターコイズ鉱山発掘記

気のせいかいつもより軽快に見える。

ポイントに到着した。

これだ。

言葉を発しなったが相方の笑みがこぼれる。

無言でお互いにグータッチを交わす。

先ずは動かしてみるがやはり微動だにしない。

 


ターコイズ鉱山発掘記

力のある相方も動かしてみるがわずかに揺れる程度だ。

周りを囲んでいる細かい岩を取り除き、スコップを差し込みてこの原理で動かしてみる。宇動いた!

少し浮いたところにつるはしを差し込み持ち上げると全貌が見えた。

大きな岩だ!

これは一人では動かせない。

 


ターコイズ鉱山発掘記

そんな大きさの岩だ。

浮かせた岩を持ち上げるとその下にまた岩があった。

相方と自然と目を合わせた。

その岩にも青い稲妻が走っていた。

思わずグータッチ!

下にあった岩は取りにくかったが上に乗っていた岩よりは小さかったの

 


ターコイズ鉱山発掘記

で容易に取れた。

心配そうに見ていた警備員に注意を促し、先ずはスコップを使って大きな岩を低地に転がした。

次に小さい方の岩を低地へと転がした。

時間も経っているし周りの目が気になっていたので、滑るように低地へと降りた。

 

 


ターコイズ鉱山発掘記

 

相方が降りてこない。

よく見ると何かを拾ってポットに入れている。

降りてきてから聞いてみると。

落ちてたぞ。と小さな数個の青い石を見せた。

大きい岩ばかりしか気にしていなかったので周りが見えなかった。

 

改めて落とした岩を見る。


ターコイズ鉱山発掘記

土埃をはらうように洗い流す。

鮮やかな青い稲妻がきれいに走っていた。

一か所ではなく青いスポットがいくつか点在していた。

もう一か所はロイヤルブルーと呼ばれるであろう鮮やかな明るいブルースポットが輝いていた。

にやけたお互いが見合わせて無言のグータッチを交わす。

 


ターコイズ鉱山発掘記

喜びと興奮もつかの間、問題が発生する。

言葉は交わさなかったが、恐らく相方も同じことを考えていたに違いない

これ誰のものだ?

発見した私のものか。

この話を持ってきた相方のものか。

 


ターコイズ鉱山発掘記

山分けか。

恐らく、お互い山分けを考えていたであろう。

そんなことを考えているうちに目先の問題があった。

これ、でかくて重いから、割るか。

そうだな。ターコイズが見えていないところをそぎ落としてみよう。

 

割ってみると青い稲妻が走っている部分は思ったより、思った通りそん


ターコイズ鉱山発掘記

なにはなかった。

母岩の部分をそぎ落とし、稲妻の走っているところを車の荷台に乗せた。

採掘許可された時間はまだあったが、達成感と幸福感に包まれていた。

せっかくここに足を踏み入れることができたのだから、ぎりぎりまで掘った。

 


ターコイズ鉱山発掘記

いや、出ないもんだな。

 

そう簡単には顔を出してくれない。

それなのにあんなに大きな稲妻が顔を出してくれるなんて奇跡に近い。

いや、奇跡だ。

その後のことはよく覚えていないくらい興奮状態で採掘をしていた。

 

時間が迫る。


ターコイズ鉱山発掘記

相方はもう終わったかの様子だ。

私もなんとなく満足していた。

時間になり作業を終えた。

仲間の警備員と再会を約束し現場を後にした。

ホテルに戻り一息つく。

 

夢見心地でお互い言葉は発しなかったが笑顔で溢れていた。


ターコイズ鉱山発掘記

まるで夢かリアルな映画を見ていたかのようであった。

早々とチェックアウトを済ませ興奮冷めやらぬ中ビズビーを後にする。

またなビズビー!

そのまま帰国の途に就いた。

帰りの車の中で頭の片隅にあった例の問題を解決しなければならなかった。

 


ターコイズ鉱山発掘記

これ、誰のもの?問題である。

相方が口火を切った。

あの岩、ターコイズあまり入ってねーな。

その時私は悟った。

これは牽制だな。

 

でも私の中ではもう心は決まっていた。


ターコイズ鉱山発掘記

それ、お前のだよ。

何!?

だから全部お前のだ。

お前が話を持ってこなかったらここには来られてないし採掘もできなかった。

 

この青い稲妻を見つけることもできなかった。


ターコイズ鉱山発掘記

遡ればインディアンになることもできなかった。

だからあれは全部お前のだ。

心残りはあったが感謝の気持ちで溢れていた。

十分夢を見たし楽しんだ。

その幸福感と達成感で溢れていた。

 

相方の嬉しさと心の中でのガッツポーズが私には丸見えだったがそれを


ターコイズ鉱山発掘記

必死に隠し、眉間にしわを寄せながら目を合わせることなくまっすぐ前を見えたままこぶしを私の方に向けグータッチを要求した。

なぜかそれが面白かった。

今までは手下扱いだったが、その時はやつの上に立った気分だった。

一泊する予定のツーソンに到着。

 

帰り際に会い方がポケットから一粒の小さなターコイズを差し出した。

 


ターコイズ鉱山発掘記

これをお前にやる。

最高のやつだ。

 

全く最高のやつではなかったが気持ちは伝わった。


ターコイズ鉱山発掘記

帰国後。

記念に少しでも持っておけばよかったと後悔の念が走り、やっぱり少しくれと相方に要求してみた。

あっさりOKだった。

 

この部分が欲しいと場所を指定して要求を出したが、要求とは異なる場所を示してきた。


ターコイズ鉱山発掘記

いやいやここだよ。ここ!

いやらしくもわかりやすくマーク画像付きで要求した。

 

 


ターコイズ鉱山発掘記

数日後。

箱にいかにもな手書きで「amazon」と書かれた箱が届いた。

箱を開けると、マークした通りの場所のロイヤルブルーが入っていた。

 

 

粋なことしてくれるぜamazon


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